Operatio 3「艦長!11時の方向に敵小艦隊をキャッチ!!威力偵察と思われます」「第一級戦闘配置対艦戦用意!各モビルスーツ随時発進」 「このタイミングでの敵艦隊に捕捉されるのは面白くないな・・・」 両手を口の前で組み、艦長席に座りながら、艦長のアフランシはオペレーターの報告を聞いて呟いた。 「敵艦に高速接近本艦の全火力集中、奇襲をかけ間断なく砲火をあびせろ」 艦長のアフランシに対して副艦が艦内放送を使い答えた。 「砲撃準備良し、方位1201プラス照準良し、砲門開け」 ミノフスキー粒子の影響化であるが、ミユキ伍長がレーダーサイトを見ながら状況報告を入れる。 「敵MSを確認・・・敵艦発砲!!」 「脅しだ!!」 アフランシ艦長は館内放送がオープンになっているのにも関らず、大声を張り上げる。 「アフランシ艦長!ノーマルスーツを着用してください」 レシーバーからの大声と直接の声の大きさに多少の抗議を込めて、ミユキ伍長が、艦長にノーマルスーツの着用を促す。 「指揮官が真っ先にノーマルスーツを着て兵士たちをおびえさせてどうする!」 「モビルスーツ隊射出完了」 「よし、各艦最大戦速、目標的艦隊旗艦!」 「ちょっと早いがこちらから仕掛けるかな?!」 サイクロン3のジムキャノンの右肩からキャノン砲が打ち出される。 「アービスさん早い、早いよ!こーゆー時は慌てた方が負けなのに」 今の一撃で敵のモビルスーツ隊が、二手に分かれる。 シフォンはセレクターを攻撃モードに選択、モニターに照準が表示される。 味方艦隊からの援護射撃は相打ちを避けるために、既に終了していた。ここからは自分たちの乗るモビルスーツによる人型兵器が両軍の運命を握る。 「サイクロン1。目視でムサイ二隻、チベ級一隻確認。モビルスーツ数12。これより攻撃に入る」 「了解、本艦も有視界戦闘空域まで、急速前進に移ります」 ミユキ伍長の声を聞きながら、シフォンはアクセルをさらに踏み込む。 メインカメラが2機のモビルスーツを捉え、映像を解析し機種を報せる。 「まずいな・・・『ブーツ』の部隊だ・・・」 「ザク」のバリエーションの1つで宇宙用高機動タイプのバックパックを推力の大きいものに換装し、脚部にもスラスターを増設している。その形状から『ブーツ』との別称で呼ばれている。機動性や運動性は向上しているが、武装についてはザクと共用である。また操縦は難しく、生産性も高いとは言えない。 そのため宇宙戦用の主力MSにはリック・ドムが採用、高機動タイプは主にエースパイロット向けに少数が生産、実戦配備されていると噂されていた。 照準を覗きながら、シフォンはトリガーを指に掛ける。対する緑色の巨体からはマシンガンを構え、戦意と殺意を感じる。 頭からぶつかる格好でシフォンは愛機を突入させる。同時に相手はマシンガンを放った。 瞬時に操縦桿を手前に引き機体の軌道をずらす。 弾丸が機体の傍らを通り過ぎていく。 「サイクロン小隊が前に出すぎだ!後退させてナツカゼの援護に付かせろ!」 「何、聞こえないぞ!!」 「サイクロン1より入電、「真紅のザク」が居ないそうです!!」 ミユキ伍長が、再度アフランシ艦長に伝える。 「あのボールは誰のだ?!」 「ウモンです。やつも「真紅のザク」を見ていないと言ってます。」 副艦がアフランシの質問に答える。 「ではどの場所にいるんだ「真紅のザク」は・・・?!」 「艦長!」 「何か」 ミユキ伍長が、新たに戦況報告を入れる。 「ゼロ方向から接近するものがあります」 そんな中、艦橋に緊急通信が流れ込む。 「「ハルカゼ」より通信『ワレ操舵不能!ワレ操舵不能!』『救難ランチの回収を願う』です」 通信を受けるとほぼ同時に「アキカゼ」に戦火が集中する。 どうやら次の狙いは「アキカゼ」の様だ。 「副長!本艦をアキカゼの前に出せ!」 「フン全ての行動が後手に回ると面白くない」 一機のザクが対空砲火を抜けてきた。 正面の艦橋窓に攻撃をかいくぐって来た「真紅のザク」が肉薄する。 ・・・艦橋の空気が凍りつく・・・ オペレーターの一人が逃げ出そうと腰を浮かすが、今からではエレベータに辿り着くことさえ出来まい。 アフランシ艦長は敵を睨みつけ、呟いた。 「南無三」 ミユキ伍長は敵の姿を締め出すかの様に目を閉じながら「シフォン」の名前を叫んだ・・・その「声」が特別回線オンのままで艦内中に響き渡り、自分に向けられたバズーカが火を噴くのを待った・・・ が、突然、一条の光が頭上から降り注ぎ、今にも発射されそうだった、「真紅のザク」のバズーカを捉える。 「ナニ!」 目の前で起こった爆発にアフランシは一瞬だが目を灼かれた。 「真紅のザク」も、一瞬何が起こったか判らず、単眼を頭上に向けた。 シフォンの放ったマシンガンが間一髪で「真紅のザク」一撃を防いだ。 シフォンは深呼吸をして接近しながら、マシンガンを背中のバックパックに収納し、ビームサーベルを抜いた。 赤い輝きを持つビームサーベルを構える青色のシフォンのライトアーマー。 「真紅のザク」も状況を理解し、ヒートホークを構え、シフォンのライトアーマーに猛烈に突進をしかけた。 そしてこの2機のMSは激しく切り結び、剣の交戦となった。お互いのヒートホークとビームサーベルが激しく交錯。 ギリギリの間合いでこちらの攻撃をかわし、その隙を突いて確実に攻撃を仕掛けてくる。 シフォンの乗るライトアーマーの左肩から下は切り落とされて既に無い。 「一筋縄ではイカンナ!流石にエースパイロットの部隊のトップガンだ!」 防戦一方になっていたその時、後方のムサイから、信号弾が2発上がった。 信号弾を確認したのか、「真紅のザク」は、攻撃を止め、間合いを取ると、一気に後退を始めた。それに連動するかのごとく残った『ブーツ』の部隊も後退を開始した。 「見逃してくれた・・・」 シフォンはそう呟きながら、自分の機体の状況をチェックし、よく爆発しなかったと思うほど、機体の損傷が激しかった。 「サイクロン2・3応答しろ」 「サイクロン2健在です」 「3なんとか生きてまーす」 シフォンの呼びかけに答える二人だが、 「後は、ヨナねーさんと、ねーさんのとこのウモン以外MS隊は全滅です・・・」 エリオスがアービスに続けて報告する。 「ハルカゼ、アキカゼともに大破・・・ナツカゼも何とか航行できる範囲ですが、次に戦闘になったらアウトです」 アービスと、エリオスの二人がチベ級を落としていなければ、被害はもっと増えていたはずだ。 何より自分の命が無かったかもしれない。 「こちら、サイクロン小隊、敵の動きも収まったようだ、ナツカゼに帰艦する」 「こちら、ナツカゼ、了解しました帰艦どうぞ」 |